脳の発達の違いは一つの特性『ひかり、あじ、おとがイタイんです』

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【データ】
・作品名: ひかり、あじ、おとがイタイんです
・作者: 語り/フミヤ、絵/今津良樹
・出版社: ほるぷ出版
・発売年月: 2021年2月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 29ページ
・サイズ: 縦25cm × 横23cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は30字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
今津良樹は静岡県生まれのアニメーション作家。作品に『モフモフィクション』など。

【内容紹介】
20歳のフミヤは、物の感じ方が人と違うことで苦しんできた。外を歩いていると、車やバイク、女子高生、サラリーマンなど、あらゆる情報が飛び込んできて疲れ切ってしまう。

周囲との差をいつも感じてきたフミヤに、大きなきっかけをくれたのは、ある先生との出会いだった。先生は怒ったり否定したりせず、話を聞き続けてくれた。フミヤは、これでいいんだ。じぶんをむりにかえようとしなくていいんだと、思えるようになった。

【レビュー】
〈作品の主題〉
感覚が人と異なる人物を通し「ふつうとはなにか」を問う絵本。

一般的に「ふつうの状態」といえば健康的で、痛みのない場合であるが、様々な要因により日常生活を送ることに苦労し、その環境、状況こそが「ふつう」である人も多くいる。そのことをこの絵本は教えてくれる。

生まれつきの脳の発達の違いやバランスの違いは、一つの特性であり、それが本人にとっての「ふつう」であると描いている。考えや行動を尊重し、ありのままを認めることが、誰もが自分らしく生きられることを教えてくれる絵本。

〈ストーリー〉
ストーリーの流れとしては、
①語り手のフミヤが感じ方の違いによる苦労を話す。
②過去を振り返り、そんな自分を救ってくれた先生とのエピソードを語る。
③自分を無理に変えず、ありのままで生きることの素晴らしさを説く。

という流れなのだが、時系列が曖昧で分かりづらい。②で過去を振り返ってるはずだが語り手の衣服は常に同じだ。もう少し丁寧に描いてほしかった。

〈絵と文〉
絵には迫力がある。なかなか分かりづらい感覚が過敏であることの苦しみがよく分かる。

文章は読みやすく、会話も用いながら書かれている。誰でもその苦しみと、ありのままで生きることの素晴らしさが理解できる工夫がされている。

〈キャラクター〉
枝を切り落とさず、子どもの考えや行動を尊重してほしいという語り手からのメッセージは心に響く。ただ二人目の登場人物である「先生」は、医者か教師かはっきりとは分からない。もう少し具体的に読みたかった。

〈製本と出版〉
文字の大きさはふつう。絵の上に文字が書かれ読みづらくなってるページが一部ある。フミヤと先生の会話のページのみ文字数が多く少しアンバランスに感じる。

【評点】


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