焚き火を見た時の落ち着く感覚が味わえる絵本『ダーラナのひ』

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【データ】
・作品名: ダーラナのひ
・作者: 作/nakaban
・出版社: 偕成社
・発売年月: 2021年11月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦27cm × 横21cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
nakabanは、広島市在住の画家。主な作品に、『バスにのるひ』『ぼくとたいようのふね』などで知られる。

【内容紹介】
ダーラナは旅の途中、浜辺にたどりつく。すると、流れ着いていた木の枝が「ダーラナ、ダーラナ。私たちを集めてごらん。焚き火をして、温まっていきなさい」とささやいた。集めた枝に、夕日のかけらがはじけ飛んで、小さな火が付くと、ダーラナは竹を使って息を吹きこみ火を大きくした。
【レビュー】
〈作品の主題〉
りっぱな焚き火を作ったダーラナは、火を見つめながらいつか見た広い野原を思い出す。ダーラナは少し眠り、そして夜が明ける。
焚き火を見た時に感じる、落ち着いて安らぎを得られる感覚が描かれている絵本。

〈ストーリー〉
タイトルは『ダーラナのひ』で、“ひ”は火を表すと考えるのが自然だが、“日”とも解釈できる。太陽が沈み、夜がふけて月が浮かび夜明けとなる、繰り返される一日が描かれている。

夕日のひとかけらがはじけて、たき火の火種となる幻想的な描写と、煙が目にしみながらも竹を使って息を吹き込み火を大きくする現実的な描写とが対比され、物語が一層魅力的なものになっている。

特に美しい描写として宝石のような火を見て記憶を呼び起こすシーンがある。
普段の生活で、何気ない出来事がふと印象的だった過去の瞬間を思い起こすことは多くの人が経験していると思うが、ダーラナは火を見つめ、広い広い野原を懐かしく思う。
静まっていくたき火を見た時に感じるじんわりとした切なさと、古い記憶の中の哀愁が連動し、カタルシスに似た抑圧からの解放感が、ダーラナの心を救っているようで、終わりに書かれるダーラナの“もう いかなくちゃ”のセリフに読んでいてこちらも前向きな気持ちになれる。
〈絵と文〉
絵は親しみやすくかつ芸術性があり想像力をかきたてるもので、特に大きくなった焚き火の周りを嬉しそうに回るダーラナの絵は大変魅力的。

文章は絵と同様にじんわりと温かみのあるもので、読みやすく明瞭な内容で簡潔に描かれていて、よみ聞かせにも適していると思う。

〈キャラクター〉
案内役となる自然の声はダーラナ自身の考えとも解釈できる。孤独を救う語りかけでダーラナの心を、ひいては読者の心を救うようだ。

物語の始まりからとんぼの絵が描かれている。その後も時折描かれているとんぼがダーラナをいつも見守っているようで、子どもっぽさもみえるダーラナだが、ひとりぼっちで悲壮な感じが少なく、たき火の安心感も後押しして力強さもある物語となっている。

〈製本と出版〉
文字は背景の絵に合わせて黒、または白の字で書かれている。背景の絵と重なり読みづらい箇所が一部ある。

【評点】


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