物を浮かすことができる超能力を描いた作品『ぼくのふしぎな力』

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【データ】
・作品名: ぼくのふしぎな力
・作者: 作/ジム・ラマルシェ、訳/藤本朝巳
・出版社: BL出版
・発売年月: 2021年5月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 26ページ
・サイズ: 縦28.5cm x 横23cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は150字ほど
・対象年齢: 小学校2年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ジム・ラマルシェはアメリカ生まれの絵本作家。主な作品に『月のしずくの子どもたち』『わたしのくまさんに』など多数。
藤本朝巳は熊本県生まれの作家、翻訳家。他に『絵を読み解く絵本入門』などで知られる。

【内容紹介】
みんなに子ども扱いされ、兄や父に「ねずみくん」と呼ばれることを嫌がる少年ダニエル。
ダニエルは早く大きくなって、パパや兄と漁に行きたいと願うが、なかなか認められない。くやしい思いをかかえるダニエルは、ある日突然、物を浮かすことができる不思議な力を得る。

【レビュー】
〈作品の主題〉
語り手のダニエルは、早く大人になりたいという、多くの子どもに共通した、わだかまりをかかえている。そんな少年の心が、幻想的な能力によって成長するさまを描いている。空中に物を浮かせられるという読者の好奇心を引き出すシーンや、困難に打ち勝ち、目標を達成する展開が魅力。

〈ストーリー〉
成長し、周囲に認められたいと望むダニエルの強い思いは、ある日突然得た特殊な能力で一応の解決に向かうが、根本的な解決には至ってない。

ダニエルは浜辺に打ち上げられたクジラを、能力を持って救う(ダニエルの能力は周囲にさとられない)ことで、父から認められ、翌日、ともに漁に行くことを伝えられる。偶然手にした能力で、特別使い方を工夫せずに、そのまま周囲に認められるという、あまり語り手の成長を感じさせない、張り合いのないストーリーとなっている。

不思議な能力自体がダニエルの空想であるという解釈も可能といえば可能だが、なかなかしづらい構成なのも残念。成長を描きたいのは分かるが描けていない。この絵本は子供が抱える、早く大人になりたいと願う気持ちを救うか。おそらく無理だろう。

〈絵と文〉
絵は親しみやすく、芸術性がある。想像力をかきたてるもので、大小さまざまなものがダニエルの力によって浮かんでいる描写はわくわくする。

文は優しさと切なさが伝わる絵ととても良く合っている。ただ物語の展開の少なさの割に文章量が多く、読んでいてやや退屈。

〈キャラクター〉
ダニエルが嫌がる「ねずみくん」というあだ名で呼び続ける兄と父は読んでいて不愉快。なんだかいじめを助長するような表現にも思う。

ダニエルが周囲の大人と協力して、浜辺に打ち上げられたクジラを救うことで
認められ、呼び名が、ねずみくんからダニエルに変えられるが、それまでの屈辱的なあだ名で呼び続けられた気持ちが救われるとは思えない。

また母親がダニエルを見守るだけで物語にさして入ってこないのも、この物語の家族観が古臭く感じる要因でもある。

〈製本と出版〉
文字の大きさは小さい。背景の絵と重なって読みづらいと感じるページがある。単純な物語の割に使われている漢字の量は多く、当サイトでは小学校2年生~とした。ただ2年生以上の読者にはもっと複雑な構成が求められるだろう。

【評点】

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