『うみ』 - 大人に寄り添う、子どものための絵本。 -

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 【データ】
・作品名: うみ
・作者: 作/ピレット・ラウド、訳/内田也哉子
・出版社: 岩波書店
・発売年月: 2023年1月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 31ページ
・サイズ: 縦24cm × 横20cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 小学校1年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ピレット・ラウドは、タリン在住の絵本作家。他に『ピンクだいすき!』『みっつのねがい』などがある。
内田也哉子は、東京生まれの翻訳家、音楽ユニットsighboat、俳優など。
主な作品に、『こぐまとブランケット 愛されたおもちゃのものがたり』『ピン! あなたのこころのつたえかた』などで知られる。

【内容紹介】
うみは、魚たちが寝る前に、物語をいつも読んであげている。でも、魚たちは、さけんだり、ふざけてばかり。つかれてしまったうみは、ある日、魚たちをおいて、どこかへいってしまう。はじめのうち、魚たちは全く気にしてなかったけれど、いつもの物語がないと、眠ることができないことに気づく。
【レビュー】
〈ストーリー〉
騒ぐことをやめない子どもたちを見守る、先生や親の苦悩が表現されている絵本。
メインとして描かれているのは、子どもではなく先生の立場で、割りと珍しいタイプの絵本だけれど、ただ内容は子どもたちへのメッセージになっている。

絵本は基本、理想的に描かれがちで、また、大人は絶対な存在で、かつ折れることなんてないように描かれることが多い。そんな絵本という媒体で、大人の複雑な心情が表現されているのは、とても価値があると思う。

物語は「大人向け」絵本といったよくある陳腐なものでなく、子どもを含めた広い読者に向けられている点もよかった。
描き方によっては、子どもにショックを与えかねないような主題だけど、物語はあくまでも、大人にも寄り添う子どものための絵本、といった感じになっている。
うみが、魚たちに字を読めるように教えることで、魚たちが本に夢中になり、うみの手を離れるようになる展開は、教育と成長の必要性と、子どもたちの自立が表現されている。
〈絵と文〉
淡い色合いが魅力的な絵本。絵は奇抜で不思議な魅力がある。
文章は、読みやすさを重視したというよりかは、豊かな表現で展開していて、イラストの印象と似た、穏やかな美しさがある。また、フォントも絵本の雰囲気に適している感じ。

〈キャラクター〉
うみは、魚たちをとても愛していたけど、でもときおり、さけんだり、ふざけてばかりの子どもたちに、疲れて悲しくなることもあった。
そんなとき、うみは、もうこらえきれなくなり、魚たちをおいてどこかに行ってしまう。
ある意味ちょっと職場放棄、育児放棄のようにも読める。子どもはさけんだり、ふざけてたりしてもいいじゃん、というような感想も持つけど、ただ、その子育てのしんどさと逃げ出す大人が描かれた表現は、多くの人を勇気づけると思う。

〈製本と出版〉
本の大きさは少し小さめ。文字の大きさも小さめ。ただ、すべての字が白地に黒で読みやすい。

【評点】


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