手紙から始まる素敵な出来事の連鎖『あんまりすてきだったから』

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 【データ】
・作品名: あんまりすてきだったから
・作者: 作/くどうれいん、絵/みやざきひろかず
・出版社: ほるぷ出版
・発売年月: 2022年6月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 32ページ
・サイズ: 縦22cm × 横22cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
くどうれいんは、岩手県生まれの作家。他に『プンスカジャム』『氷柱の声』がある。
みやざきひろかずは、奈良県生まれの絵本作家。主な作品に、『パウルのスケッチブック』『ほんのにわ』など多数。

【内容紹介】
こんちゃんがテレビをみていると、歌手が歌っていた。その歌声が、あんまりすてきだったから、とっておきの万年筆で「そのうた、とってもすてきです」と、こんちゃんは心のこもった手紙を書いて出した。それを見た郵便屋さんも、うれしい気持ちになって、自転車をこぎながら口笛を吹いた。口笛を聞いたやまめは、なんだかうれしくなって、しぶきをあげて跳ねる。

【レビュー】
〈作品の主題〉
やまめが跳ねた川のきらめきが、あんまりすてきだったから、昼間の月はにっこり微笑む。あんまり素敵な夜だから、みんなうずうずわくわくと、いつもより明るい空になる。
こんちゃんの手紙をきっかけに、素敵な出来事が繋がっていき、さまざまな人を幸せにする、心温まる絵本。
〈ストーリー〉
ストーリーは、こんちゃんがテレビで素敵な歌声を聞いて、手紙を書くことから始まる。心のこもった手紙を見た郵便屋さんが口笛を吹く。口笛を聞いたやまめはうれしくなって跳ねる……。と、「あんまり すてきだったから」とみんなが思いながら連鎖していく。

このような知らず知らずのうちに出来事が連なっていき、世界中を照らしていくといった、バタフライ効果のような、「風が吹けば桶屋が儲かる」のような絵本は割とありがちだが、言葉の使い方に小さな工夫があって楽しく読める。

例えば、こんちゃんは手紙を「とっておきの万年筆」でしたためる。手紙を受け取った郵便屋は「そよぐ葉っぱと同じ色」の手紙に気分を良くする。
総称で魚とせずに「やまめ」と書いたり、「昼間の月」が登場したりと、ほかの絵本ではあまり見ないような“小物づかい”が印象的で、そのちょっとした違いが心に残る。

〈絵と文〉
縁取りのない淡い水彩画のイラストが美しい。特にこんちゃんが歌手を見た、木でできたテレビが素敵。植木鉢がスピーカーになっている。他にも鉛筆型のポストや、カボチャのおうちなど、ちょっと不思議な物語と調和していて魅力的に描かれている。また、探す楽しさもある。

文章は、こんちゃんのスキップだったり、郵便屋の口笛だったりの聞きなれない言葉のリズムがとても楽しく読める。
〈キャラクター〉
キャラクター性が際立っているタイプの絵本ではないが、どのキャラも朗らかな表情で、生き生きと描かれている。

一つ引っかかったのは歌手で、カバのような見た目だが、名を「マリヌッツィ ジャコメッリ カバリッツァ」という。
イタリア風の名前で、Marinuzzi、Giacomelli、Cavalizzaのどれも実在する名前ではあるが、珍しい名前をネタっぽく絵本のフックにするのは、ちょっとステレオタイプに人名を使っているようで気になった。

〈製本と出版〉
正方形のやや小さめの絵本。文字の大きさはふつう。セリフが太文字で書かれている。文字の一部が背景と重なり読みづらい箇所がある。

【評点】


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