13種類もの犬たちの微笑ましい秘密の会話劇。犬の絵本『眼鏡会議』

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【データ】
・作品名: 眼鏡会議
・作者: 作、絵/菊野葉子
・出版社: 文芸社
・発売年月: 2021年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 42ページ
・サイズ: 縦19cm × 横21.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 6:4 1ページ当たりの文字数は200字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
菊野葉子は千葉県生まれの絵本作家。

【内容紹介】
夜になると、犬たちは「メガネカイギ」をはじめる。犬たちは捨ててあったメガネを拾ってきて、それをかけて明け方まで語り合っている。そこに、新人のチビがやってきた。犬たちは、チビがカイギにふさわしい犬か判断するため、質問を始める。チビは、メガネカイギに入会できるのか。

【レビュー】
〈作品の主題〉
メガネカイギの名前の由来は中盤に明かされる。「会議をする人間はたいてい眼鏡をかけている」といったことからで、犬たちは眼鏡をかけて明け方まで語り合う。
13種類ものそれぞれの特徴を持った犬が登場し、微笑ましい彼らの会話をこっそり見ているような、ひいてはその不思議な会議に参加しているような心地で楽しめる絵本。

〈ストーリー〉
絵本を読み始めるとき、読者は人物の名前、時代、場所といった情報を記憶することが必要で、かつ展開を推測しながら読み進める。冒頭部分は読者にとってとても負担の大きな箇所になる。すんなりと物語に没入するために、導入は作品の大事な要素となる。

この絵本では1ページ目で作品に登場する13匹の犬の年齢、種類、特徴が様々に示される。作品内では多くの犬が登場するため、物語を理解するために紹介ページとの往来に忙しくなる。やや雑多な印象を持つし、残念ながら犬たちは紛らわしく点在しているように思った。

犬たちは昼に眠りすぎたため眠れない夜に集まるという設定で、なんだかアニメ映画『トイストーリー』が連想される物語だが、どうしても絵本という表現媒体だと声でキャラクターを分けることが出来ないため、没入するのに時間がかかる。そしていまいち入り込めないまま終わってしまう。ただ、没入することで自分がこの会議に参加している気持ちで読める。

〈絵と文〉
黒を基調としている絵本で少し読みにくさはあるが独特な趣がある。影の使い方が上手く、その秘密の集会感がうまく演出されている。
絵本の終わりで、それまでの薄暗いシーンの連続から夜が明けて朝日に鮮やかに彩られる。犬と花々が大変美しく印象に残る。

文章はですます調で読みやすい。悪役の登場しない平和的な物語に合った落ち着いた魅力がある。一方でやや冗長にも感じるページもある。

〈キャラクター〉
猫の集会というのがあるが、犬の集会だと犬種によって見た目が違うこともあって個性が際立ち楽しんで読める。
「メガネカイギ」の描写が中心で、それぞれの犬が家でどんな暮らしをしているのかを想像するのも楽しい。

面接官を務めるプンプンはメガネカイギへの入会を希望するチビに対し、飼い主に吠えたことはないか、家出をしていないか、など様々な質問をするが、その中で、「びょうきや けがは ありませんか?」という質問が出る。おや? と思うが、すぐにショーンという犬が、「これは おたがいの よわいところを しるための しつもんだよ」と言う。これらの病気や障害を理解し受け入れる描写は素敵に感じた。

〈製本と出版〉
小さめの絵本。イラストに合わせて黒、または白の字で書かれている。犬の名前の文字が太字で書かれている。文字の大きさは少し小さいが読みやすい。

タイトルロゴは作品に関連する装飾が施されていてとても素敵だ。
しかし引っかかるのは表紙に書かれるタイトル「眼鏡会議」は漢字で書かれているのに、作品内では漢字は一切使われていないことだ。どっちつかずの印象を受ける。
漢字なしの絵本なのにタイトルで漢字を使ったのはなぜだろう。大人向けの絵本として出版し、“絵本っぽさ”を演出するために分かち書きで漢字なしのスタイルを利用したのだろうか。
対象年齢がぐらついているように思う。当サイトでの対象年齢は6歳~とした。

【評点】


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