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【データ】
・作品名: おばあさんとトラ
・作者: 作、絵/ヤン・ユッテ、訳/西村由美
・出版社: 徳間書店
・発売年月: 2021年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 49ページ
・サイズ: 縦29.5cm × 横19.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は30字ほど
・対象年齢: 5歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ヤン・ユッテはオランダ生まれの絵本作家、イラストレーター。主な作品に『おつきさまにぼうしを』『10ぴきのいたずらねこ』などで知られる。
西村由美は福岡県生まれの訳者。他に『おてんばヨリーとひげおじさん』『お話のたきぎをあつめる人 魔法の図書館の物語』など多数。
【内容紹介】
散歩が大好きなヨセフィーンおばあさんが森に散歩に行くと、トラが現れた。おばあさんはぎくっとしたが、トラがなついてきたので、家に連れて帰ることにする。トラと一緒の毎日は楽しく、二人は町中の人気者になる。
【レビュー】
〈作品の主題〉
トラはおばあさんや町のみんなと仲良く過ごすが、ある日、具合が悪くなってしまう。獣医さんにホームシックと診断され、おばあさんは、トラを南の国へ帰すことを決意する。おばあさんとトラの心温まる友情と、切ない別れが描かれている。
〈ストーリー〉
危険な生き物との空想的で情緒的な友情(恋愛)物語は、絵本においてよく見かけるストーリーの一つだ。クマだったり、ライオンだったり、ドラゴンやおばけでもある。そして、変えることのできない違いによる、切ない別れが描かれているのもまたありがちな展開だ。
おばあさんがトラと別れる“南の国”は明確にどこの地域か説明されていないが、蛇使い、民族衣装、自転車タクシーなど、南アジア(インド)に対するステレオタイプのイメージで描かれている。
こうしたオリエンタリズムな表現、つまり、東洋に対する神秘性や、後進性といった非ヨーロッパなイメージを強調するイラストは問題に思う。自分たちの住むヨーロッパと、未知の世界アジアを対照的な存在と見なすことで、アイデンティティを獲得しているようで、西洋中心的な思考が垣間見えて残念。
〈絵と文〉
背景の小物の描き方がいい。小さな発見が楽しめる。おばあさんの部屋には夫のような人物の絵が飾られているが、亡くなっているようで、トラとの出会いはその喪失感を埋めることになっていると考えられる。
また、おばあさんは、絵描きさんに頼んでトラの絵を描いてもらったりするが、その後トラの絵は、ふたりが別れた後、ひっそりとおばあさんの部屋に飾られている。
文章は読みやすく、言葉がわかりやすく適切で、明瞭な内容で簡潔に描かれている。よみ聞かせも適していると思う。
〈キャラクター〉
おばあさんは仲良くなったトラと愉快な日々を過ごす。トラの体の上に足をのせて温めたり、近所の子どもを背中に乗せたりする。
当初町の人に恐れられていたトラが、受け入れられていく様子がユーモラスに描かれている。特に、つないでいないとみんながびっくりするという理由で、おばあさんがトラの首に付けたのは細い毛糸という描写は、そのちぐはぐな感じがとても面白かった。
〈製本と出版〉
本のサイズはやや大きめ。縦長の絵本。文字の大きさは小さめ。イラストと文章が書かれている場所が上下に分かれており、文字は読みやすい。
【評点】
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