タイムズスクエアやセントラルパークを回るライオン『としょかんはどこへ?』

書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします(試し読みあり)

【データ】
・作品名: としょかんはどこへ?
・作者: 文/ジョシュ・ファンク、絵/スティーヴィ・ルイス、訳/金柿秀幸
・出版社: イマジネイション・プラス
・発売年月: 2021年7月
・出版形態: 紙の本と電子書籍
・ページ数(作品部分): 34ページ
・サイズ: 縦26cm × 横26cm
・絵と文の比率: おおよそ 9:1 1ページ当たりの文字数は50字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: なし
・ルビの有無: ー
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き

【作者】
ジョシュ・ファンクは、絵本作家。他に『あいぼうはどこへ?』がある。
スティーヴィ・ルイスは、アニメーター、絵本作家。『王子と騎士』など多数。
金柿秀幸は絵本ナビの代表。主な作品に、『幸せの絵本』など。

【内容紹介】
ニューヨーク公共図書館の入口を守るライオン像、フォーティテュードとペイシェンスは、いつものように絵本を読もうと、こっそり図書館に忍び込む。ところが、絵本がすっかりなくなっていた。二頭は、絵本を探しに夜のマンハッタンをかけまわる。
【レビュー】
〈作品の主題〉
ニューヨーク公共図書館の正面玄関前に設置されている、二つのライオン像が、なくなってしまった絵本を探すため、ニューヨーク中を駆け回る絵本。

タイムズスクエアを探し、セントラルパークを周り、不思議の国のアリスや、アンデルセンに相談したり、ニューヨーク中の図書館へ行く。各観光地へライオンと共にまわり、銅像が親しげに話す幻想的な世界観が楽しめる。
〈ストーリー〉
楽しむために前提とする知識がそれなりに必要な絵本。舞台が身近な土地ではなくとも、読んでいて楽しめる絵本は多くあるが、この絵本はそうではない。

セントラルパークに不思議の国のアリスやアンデルセンの銅像があることを知らないと、なぜ彼らが登場し、会話しているのか分かりづらいし、そもそも、帽子のおじさんが「カラスと つくえが にているのは なぜだい?」となぞなぞを出すシーンも、不思議の国のアリスを知らない読者に不親切だ。

これは不思議の国のアリスの第7章「狂ったお茶会」に登場する帽子屋で、このなぞなぞは、答えのない問いかけである。それを短い絵本で引用するのも、ただ謎を残すだけで未読の読者には心地いいものとは言えないだろう。

なお、不思議の国のアリスの原作者、ルイス・キャロルは、後から思いついた答えとして、「どちらも少しの“note”(鳴き声、文書)が出せるが、非常に “flat”(単調、平板)なものだ。そして、どちらも前後を間違えることは決して(nevar)ない!」(nevarはraven(カラス)の綴りを逆から読んだもの)と記している。
〈絵と文〉
前提とした知識がないと楽しみづらい絵本だが、ニューヨークを観光気分で楽しむといった読み方もしづらい。タイムズスクエアやセントラルパークは美しく描かれているが、ほかは町並みとはいえない分離した建物が多く、またほとんどが夜のシーンだ。
ジェファーソン・マーケット・コートハウスや、チャタムスクエアにあるニューヨーク公立図書館の支部が登場するが、どれも建物自体が独立していて魅力的な絵とは言えない。

文章は、漢字なしの分かち書きが行われているもの。ですます調で大変読みやすく親しみやすい。ただ上記したように、楽しむにはある程度の知識が必要な絵本のため、対象年齢がぐらついていると感じる。

〈キャラクター〉
二頭のライオン像がニューヨークを巡るという絵本だが、この二頭のライオン、フォーティテュードとペイシェンスにあまり特徴がない。見た目も性格も口調も変わりない。実在のモデルがあるので、色のついた衣装を着させるとかはしづらいだろうが、顔つきや性格に差異を出したほうが、もっと楽しめる絵本になったと思う。

〈製本と出版〉
文字の大きさは小さめ。黒、または白の字で書かれている。背景の絵と色が重なり読みづらいと感じる箇所がある。

【評点】


【関連する絵本】