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【データ】
・作品名: ドガさんをおいかけて
・作者: 作/エヴァ・モンタナーリ、訳/安野亜矢子
・出版社: 文化出版局
・発売年月: 2021年3月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 28ページ
・サイズ: 縦29cm
・絵と文の比率: おおよそ 7:3 1ページ当たりの文字数は200字ほど
・対象年齢: 小学校3年~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: なし
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
エヴァ・モンタナーリはイタリア在住の作家、イラストレーター。他に『きょうからほいくえん』などがある。
安野亜矢子は『ゾンビのホラーちゃん』シリーズなどで知られる訳者。
【内容紹介】
パリのオペラ座でのバレエの公演の日。バレリーナの少女は、チュチュを着ようとバッグの中を見たら、画家のドガさんの絵の具がつまっていた。ドガさんと少女は、おたがいのバッグをまちがえたようだ。少女は雨の中、オペラ座を飛び出してドガさんをさがしに行く。
【レビュー】
〈作品の主題〉
数々の画家たち、印象派の名画を巡りながら、バレリーナの少女が19世紀のパリを冒険する物語。創作だが、少女を通じて名画誕生の裏側に関わるような楽しさがある。
〈ストーリー〉
19世紀のパリを舞台にバレリーナの少女が、おたがいのバッグをまちがえたドガさんを追いかける物語。ドガさんとはエドガー・ドガであり、追いかける道中でモネ、カイユボット、ルノワール、メアリー・カサットと印象派の画家たちと少女は会い、助言をもらいながらドガさんを追う。
語り手の少女が著名な登場人物と会話をする様子は読んでて楽しいが、知識を前提としている物語ではある。興味のきっかけとしては優れている絵本だと思うが、絵画の世界に関心のない読者には退屈に感じられるかもしれない。
〈絵と文〉
絵は印象派の絵画をオマージュしダイナミックな構図で描かれている。
文章は語り手の少女の目線で明るく元気に読みやすく書かれている。ただ上記した絵画の用語に加え、バレエの用語も使われているため少し困る子どもの読者もいるだろう。
例えば、「チュチュ(バレリーナのつけるスカート)」、「オペラ座(パリにあるバレエ劇場)」「ピルエット(バレエで片足を軸としてこまのように回る動き)」「ムーラン・ド・ラ・ギャレット(ルノワールの絵画にもなったダンスホール)」「グラン・ジュテ(バレエで開脚しながら大きく飛ぶ動き)」などが説明無く登場する。また語り手の少女は他の登場人物にマドモアゼル(フランス語でお嬢さんの意)と呼ばれる。
何でもかんでも広く読まれるために平易な言葉づかいにすると作品の雰囲気(特にこの絵本では19世紀のパリの文化)が損なわれるが、この絵本は絵画にバレエの用語、フランス語とあまりに多い。
子どもたちは九割ほど知っている言葉で構成されている本を読むことで、残り少しの知らない言葉を前後の文脈や絵を見てなんとなく理解できるようになり、語彙を身に着けていくはずだから、それらの特徴が特別絵本の欠点に直結するわけではないが、この作品では数の多さゆえに気になった。
〈キャラクター〉
途中画材屋のタンギーという男性が登場するが、これはゴッホが絵画で描いた実在した画材屋である。この辺りも知っている人だけが楽しめるもので、あまり万人に、特に子どもたちに推奨できる作品かというと微妙。
史実をうまく脚色してエンターテインメントに仕上げているともいえるが、実際に19世紀のパリへタイムスリップするような楽しさはない。つまるところ現代からの視点で物語にあまり没入できない。
〈製本と出版〉
フォントは特徴的で少し読みづらい。対象年齢は、当サイトでは小学校3年~としたが、上記した様々な理由から分かりづらいと感じる読者もいるだろう。文字の大きさはふつう。背景の絵との重なり読みづらいと感じるページが一部ある。
大人の読者を対象に書かれた絵本かもしれないが、少女を語り手にし、表紙に描かれているのもバレリーナの少女である以上、その想定はしづらい。『ドガさんをおいかけて』というタイトルも、見ただけではそれがエドガー・ドガであると想像しづらいために、購入後に少し困惑する読者もいるだろう。
なお、巻末には絵画や印象派についての解説も書かれているが、当サイトでは絵本は作品部分のみをもって評価している。なぜなら、解説を前提とした作品は絵本として完成しているとはいえないし、そのような本が増えると絵本芸術の発展が損なわれるため。
【評点】
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