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【データ】
・作品名: 青い花のえかきさん
・作者: 文/ソーニャ・ハートネット、絵/ガブリエル・エヴァンス、訳/みらいなな
・出版社: 童話屋
・発売年月: 2021年12月
・出版形態: 紙の本
・ページ数(作品部分): 37ページ
・サイズ: 縦19cm × 横23.5cm
・絵と文の比率: おおよそ 8:2 1ページ当たりの文字数は40字ほど
・対象年齢: 6歳~
・カタカナの有無: あり
・漢字の有無: あり
・ルビの有無: 総ルビ
・分かち書きの有無: あり
・縦書き、横書き: 横書き
【作者】
ソーニャ・ハートネットはメルボルン在住の作家。他に、『真夜中の動物園』『銀のロバ』などで知られる。
ガブリエル・エヴァンスは西オーストラリア州の児童文学作家・イラストレーター。
みらいななは東京都出身の翻訳者。主な作品に、『おいっちにおいっちに』『ボクは船長』など多数。
【内容紹介】
「あさ めが さめた。がっこうなんて いきたくないもん」
わたしは学校が大っ嫌い。ある晩、宿題ができなくて、泣きそうになり、「宿題をみんなと同じように出さないと、笑いものになるの。そんなの嫌よ」とママに言う。「みんなと同じでないと、何がいけないの?」とママ。私は「違うって当たり前なの?」と驚く。
【レビュー】
〈作品の主題〉
自分と他の子の運動能力や学力、容姿なんかを比べてしまい、劣等感を持ってしまう園児や小学生は多いと思うが、この絵本では、語り手の子が、運動が苦手で、勉強もおしゃべりも嫌いで、そんな自分に大きなコンプレックスを抱えている。そして語り手のわたしは、学校に行きたくないと願う。
不登校の子を救う絵本になるというよりかは、問題なく学校に通え、楽しんでいる子らに、休みがちな子が、どのような思いを抱えているかを伝え、理解を促す絵本。
〈ストーリー〉
少女は勉強についていけず、学校に行かないと母に伝えるが、それに対し、母は、「がっこうに いきなさい。 びょうきじゃないでしょ」と言ったり、笑いながら、「あなたは いつだっておうちにいたい ひと なのよ」と言う。
母の言葉は手厳しい。学校は絶対に行かなければならないと強調している表現だ。学校に行くことが絶対的に正しく、唯一の道であるようなストーリーに読める。実際は様々な選択肢があり、例えば、不登校の子の受け皿となるフリースクールに通ったり、家庭で学ぶこともできる。学校でも保健室登校や、カウンセリングルーム、転校、通信制高校への進学など、多くの道がある。
ただ、語り手のわたしが自ら生きる道を見つける過程と、わたしはわたしと、前向きに終わる物語で読後感はいい。
〈絵と文〉
水彩画のようなイラストは魅力的で、思い悩むわたしの様子は、読んでいて少し苦しくもなる。一方で自分の大好きな“青い花”を描いている時の様子は開放的でとても生き生きとしていて、微笑ましい。
文章はちょっと役割語が気になる。○○だわ。○○なのよ。と、繰り返し訳されているため、現実の不登校の問題を描いている作品なのに、空想的な印象を受けてしまう。また、せっかく中性的な見た目で、語り手の名は明かされていないのに、性を限定しているように感じる。
〈キャラクター〉
上記したように、母の言葉は遠慮がなく容赦ないが、語り手のわたしの、ネガティブだった思考が変化し、それぞれの特徴を受け入れ、学校へ行くと決める様子は美しい。みんな違ってみんないいというありがちなメッセージだが、わたしの繊細で素朴な語りが切なくも温かく心に響く。
〈製本と出版〉
横長で小さなサイズの絵本。文字の大きさはふつう。背景の絵と重なる箇所があるが、読みづらい部分はない。
【評点】
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